「例えばここから飛び降りるとして」
「ドラマとかでよく学校の屋上から自殺を図るいじめられっ子とかいるじゃない?」
「いるよね。大体熱血先生か、恋人が助けに来てくれるよね。ドラマは。」
「そうなんだよね。僕は平々凡々な学生生活を送ってきたからさ、自殺を企てるような人間は周りにいなかったよ。」
「ウチはどうだったかな、よく覚えてないや。」
「例えばここから飛び降りるとして、どんな事を考える?」
「まずは友達に相談したり、親に相談したりしようかなって思うけど」
「じゃあ友達ができなくて、不幸にも親を亡くしていたら?」
「そう言われると一気に考える事無くなっちゃうなぁ、来世ではもっと良い生活が出来ますようにとか?」
「じゃあ飛びました、落ちました、はい死んだ~と思ったら全身が燃えるように熱いのに意識があります。どんな事を考える?」
「もう考えることなんて無いよ、そのうち死ぬし。」
「それでも何かはきっと考えてるはずだよ、何かは」
「走馬灯の延長戦みたいな感じで、過去の出来事がフラッシュバックしてるんじゃない?」
「もしそのフラッシュバックの中に何か一つでも楽しい出来事が存在していたら相当後悔しそうじゃない?」
「でももう何もかも遅いよね、自殺なんて考える前に楽しかった事をたくさん考えるなんて簡単なことに思えるのだけど、どうにも難しかったのかな。」
「じゃあ、自殺する時は辛かった出来事だけ思い返しながら死ぬのが案外良いのかも知れないね。」
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