五月晴れ。(花陽SS)
雨。
部室の窓から眺める景色はここのところ雨続き。
こんな雨の日でも、穂乃果ちゃんたちは生徒会の仕事で忙しいみたい。
それに、ここまで響いてくる心地良いピアノの音は真姫ちゃん。
つまり、放課後の部室に真っ先に集まってくるのは私と凛ちゃんだけなの。
その凛ちゃんはというと、部室に来てすぐに寝ちゃったの。
授業中も寝てた気がするけど、寝る子は育つって言うもんね?
ザーザーと規則的なリズムを刻む雨に、真姫ちゃんのピアノの音。
なんだか私も…………。
「……たち…………やる…………」
声が聞こえる。
聞き慣れている声……。
「……しっかり…………部長……」
前髪が揺れて少しくすぐったい。
なんなのかな、この安心感……。
引き戻されるように、少しずつ目を開く。
パタンとドアが閉まる音が聞こえたような気がした。
同時に、突っ伏していた机の上に何かが転がった。
…………王冠?
雨はすっかり上がって雨音はもう聞こえない。
ピアノの音も。
いつまでもこうしていられないよね。
私は軽く咳払いをして、凛ちゃんの肩にそっと手を置いた。